緊急と時間と憂鬱と 52話
一瞬時が止まったように思えた。
しかし、ハッと我に返った晋太郎が、更に後ろから園田に飛び掛った光平に飛び掛る。
三人が揉み合い、倒れる。
転がった先には縛られ、猿ぐつわまで噛まされた男が寝転がっていた。
合計四人。
緊縛されていたのは地倉大気。
彼は持ち前の頭脳で光平の行動を捕捉し、この場所を発見した。
大気は迷いながら光平を追ってきた。
光平がクロだった時の選択肢はそういくつもない。
一つ。
自首させる。
一つ。
彼の存在をなかったことにする。
その他にもいくつか考えたが、どれも自分の手を更に汚さなければいけない。
光平も風雨も大事な友人だったが、自らを犯罪者に堕としてまですべきことかどうか。
普段は判断の早い大気だったが、まずは光平がクロなのだとしたらその理由を探らなければいけないと考えた。
事と次第によっては、光平のクロをシロに塗り替えることができる可能性だって浮上する。
ここは園田が借りている部屋だ。
住居としてではない。
その用途はわからなかったが、大気には光平を洗脳するための場所のように思えた。
その推理はあながち間違ってはいなかったのだが、園田と光平しか利用しない場所だと考えたのが誤りだった。
もう一人の洗脳候補者、三宮晋太郎に見つかった。
晋太郎が、園田と光平のことを嗅ぎまわっていることに気付き、どうしようか迷っているうちに園田に気付かれた。
そして捕らえられた。
「よくやった。三宮君」
揉み合った中からひょろ長い男が立ち上がり呟いた。
そして、締め上げられた光平は大気同様動きを封じられてしまった。