緊急と時間と憂鬱と 51話
「結局、そういうことだったんだろ!?」
「そう解釈したのは君の自由だ」
「な…、だって、アンタがそう言ったんじゃないか!」
いきり立っているのは、空山光平だった。
二人の会話がいたたまれない。
だから、絞り出すような声で三人目の男が発した。
「自首…しようよ、空山君」
「自首!?…自首?オレ、…オレ、だって、オレは…」
光平が苦しそうに次の言葉を探すが言葉にならない。
「三宮君の言う通りだよ、空山君。
君は現世、つまり今のこの場、現代日本における犯罪を行った。
それも重罪だ」
「オ、オレは、オレはただ…」
空山光平と三宮晋太郎は、このひょろ長い男、園田に傾倒していた。
自分に自信を失い、絶望すら覚えるような弱々しい自我は園田のコントロールの格好の的となったのだ。
光平と晋太郎の最大の違いは支え。
光平は風雨のことを想っていた。
心から想っていた。
だから守りたかった。
大気のような万能の人間に、いやそれ以上の存在になって風雨に相応しい自分になりたかっただけだ。
そういう意味ではその自我は弱々しくなどなかったのかもしれない。
ただ純粋で、強い気持ちに相反する弱い自分との自己矛盾に耐え切れなくなった。
一方の晋太郎は、穂乃香とレイに守られていた。
一時期、牧村レイが職場を離脱して曖昧で不安定になりかけた。
しかし、最後の最後で穂乃香の存在が彼を支えた。
今はレイも戻ってきて、善悪の判断もつく。
園田の魔法のような言葉と牽引力にも負けない。
光平が突然園田に飛び掛った。