緊急と時間と憂鬱と 37話
私達、いや、私に出来ること。
アレ。
その実態は、万年筆、だ。
白い羽根が生えた万年筆を私は持っている。
知る限りのすべてをノートなり紙なりに、その万年筆で書き出す。
そして思考。
可能性や関係、想定などのあらゆる情報を書き出す。
そうして導いた最善策が、今までに何度か光平を救ってきた。
気が進まないのには色々と理由がある。
その万年筆を使っている間、私はトランスする。
極度の集中が必要で、人が変わったようになる。
その時の意識はかろうじてあるが、確かに普段の私ではない。
自分が別人に変貌することが、気が進まない理由の一つ。
未知も大気も過去にトランス状態の私を見ている。
未知は悪意なく、私の豹変を面白いと思っているようだ。
そして次の理由。
疲れる。
その疲労たるや一週間学校を休んだことがあるほどだ。
疲労に関して言えば、今回ほど深刻であればたいした問題ではない。
トランスする時間が長くなって、一ヶ月寝込んだって構わない。
最大の理由は、その万年筆自体にある。
なんと表現して良いかわからないが、私はその万年筆を何度か使った経験則として、向き合うことに強い抵抗を感じてしまう。
私の感覚で、常識など一切無視して表現するならば。
その万年筆は生きている。