Grim Saga Project

緊急と時間と憂鬱と 29話

 
 
 
 
 
 小さな会議室は、先日牧村が捜査員2人を叱責した場所だった。
 脇田と姫森、牧村と晋太郎が簡単に名を名乗る程度の自己紹介をした。
 
 
 
「今回の件、大変申し訳ありませんでした。
国民のために動く警察が、国民のことを考えずに振る舞ったこと、とても残念で遺憾です。」
 
 
 
「話のわかりそうな方が来て下さって良かった」
 
 
 
 牧村と名乗った小柄な女性はキュートな見た目とは裏腹に、なかなかキレる人間のようだ。
 脇田のシンプルな謝罪の言葉に込められた気持ちを汲んだのが見受けられた。
 
 
 
「よく署内でも再教育致します。
警察の人間が国民のことより地位や名誉を重んじたり、事件解決以外に目が向かなくなっては、みなさんから信頼していただけなくなって当然ですので。」
 
 
 
 ヒメのこういった対処は、純粋にうまい。
 脇田は必要以上に喋ることはあまり得意ではなかったので、とても助かっていた。
 
 
 
「ただ、ウチのがお伝えした通り、三宮さんはまだ容疑者です。
ご迷惑でない程度に、というか三宮さんが犯人でないことを証明するためにも、犯人逮捕まではマークさせていただきます。」
 
「ええ。
捜査に協力しない、と申し上げているわけではありませんので。」
 
 
 
 牧村がそう言うと、隣の晋太郎はこくこくと頷いた。
 面倒事を伝えた脇田もホッとした。
 
 話がわかる相手で良かった。
 お互いにそう感じていたが、非情なもので。
 そうそううまくいかないことが直後に待ち受けていた。