緊急と時間と憂鬱と 28話
捜査をするのはなぜか。
犯人を逮捕するためだ。
犯人を逮捕するのはなぜか。
罪を犯した者にそれを自覚させるためであり、それ以上の罪を重ねさせないためであり、そしてもう犠牲者を出さないためだ。
すべては自分たちも含めた人間のため。
当たり前といえば当たり前のことである。
だが警察というやつは時にその原理原則を忘れてしまうようだ。
脇田は別部隊の一つが、ある容疑者にアリバイ確認をしに行って、その上司にしこたま文句を言われて帰ってきた旨、報告を受けた。
頭が痛かった。
報告がまず気に入らない。
自分たちは悪くないのに、という感情が前面に押し出されている。
そんな意識だからこんな面倒が起きてるんだろうが。
どうしてこうお役所系は高慢で天狗なんだか。
そもそも原理原則なんて、頭の片隅にもないのかもしれない。
愚痴っても始まらない。
早速容疑者の職場に電話を入れて、夜のアポイントメントを取った。
日中だと同じことだ。
こういうのはヒメを連れて行くに限る。
もちろん当事者の捜査員も2名連れていく。
彼らにはとにかく黙ってるように言っておいた。
署内で説教して、また謝りに行くなんて二度手間を掛ける理由がないので、一度で済ませる。
19時、脇田達4人は牧村レイと三宮晋太郎の居る職場に赴いた。