緊急と時間と憂鬱と 26話
やはり牧村さんは牧村さんだ。
警察に食ってかかっていた牧村を見て、晋太郎はなぜかとても安心感を覚えた。
もちろん晋太郎自身が犯人ではないことを信じてくれたこともそうだが、牧村のように自分をしっかりと確立していて意見をはっきりと前面に押し出す。
それができる人間は少ない。
少なくとも社内には、牧村のほかには思い当たらなかった。
牧村が突然会社に来なくなって2ヶ月ちょっとの間。
晋太郎は、こんなにも会社が仕事がつまらないとは思ってなかった。
臨時で上司を務めてくれた人間の器の小ささにも驚いたが、少し叱責されたりするだけで思いの外ダメージを受けて引きずる自分にもがっかりした。
ここまでどうにかやってこられたのは、穂乃香の存在があってこそだとつくづく思う。
そういえば穂乃香と牧村は少し似たタイプなのかもしれない。
以前一緒に食事をした時は傑作だった。
穂乃香が…、いやいや。
今はそれどころじゃない。
せっかく牧村が帰ってきた。
臨時上司から開放された。
闇に光が差し込んだような気分。
すべてうまくいく。
また以前のように。
一時は臨時上司も殺してやりたいぐらいに腹が立ったが、今はもうどうでもいい。