緊急と時間と憂鬱と 25話
レイから見て晋太郎は明るいほのぼのとしたかわいい後輩だった。
ただ、ちょっとマイペースなので仕事が早いとは言えないのが珠に瑕だ。
それでも真面目に仕事をしていたし、堅実・誠実である。
その点をレイは評価していた。
2ヶ月以上も留守にして、晋太郎が少し暗いと感じていた。
レイが不在の間の上役と折り合いが悪かった、と他の同僚から聞いた。
なるほど。
確かに。
以前自分と仕事をしていた時の良さすら影を潜めて、晋太郎は少しおどおどしているように感じた。
鍛え直しだな。
晋太郎もだけど、上役も。
どうやら教育・育成に向かない人間が社内にいるようだ。
少し私情が挟まれた。
未来のことが頭をよぎった。
だが、レイが警察に訴えかけたことは的外れでもなかったし、晋太郎から見てもレイらしくはあった。
しかし。
仮に自分が付きっきりで教えていた時よりも、晋太郎の気持ちが負に傾いていたとしても、晋太郎がそんなことをするとは思えない。
彼の恋人、穂乃香もついている。
一時期、晋太郎と仕事をして帰る時間が遅い日が続いた。
晋太郎と夕食を済ませることもあったし、飲みに行くこともあった。
彼女がいることを聞いていたので、おかしな疑いが掛かる前に、穂乃香も食事に同伴させていたのだ。