緊急と時間と憂鬱と 23話
夫は水谷未来。
水谷家はこの界隈では有数の地主で資産家。
つまりお金持ちだ。
未来はそんなことをまったく感じさせない人柄で、誰からも好かれた。
レイ自身、どうして自分と一緒になってくれたのかわからないぐらい。
話を聞いて、少し警戒していた妹の未知は、確かに異常なほど兄を愛していた。
だが、最悪の展開ではなかった。
レイは下手をすると、自分が敵対視されるのではないかと恐れていた。
会ってみると未知は人形のように美しく、聡明で、非の打ちどころがない。
レイが感じたのは、未知が本当に兄を好きなんだということ。
抱き着いたりも平気でしていたが、レイと結婚するという話を聞いても、不快に思うでもない。
やっとお兄ちゃんの魅力をわかってくれる人が現れたのね。
ちゃんと家にも帰ってきてね、私に会いに。
レイさん、お兄ちゃんをよろしくね。
未知は家に兄がいなくなることは寂しかったようだが、特に大きな抵抗はなかった。
未来がホッとしていたのも印象的だった。
未来が他界した時の未知の嘆き方は可哀相なほどだった。
自分も当然悲しかったし、一ヶ月は茫然自失状態。
未知もしばらくは何も出来なかったと聞いた。