緊急と時間と憂鬱と 21話
物騒だなぁ。
晋太郎が感じたのはそれだけだった。
先日近所で起きた殺人事件の関係で警察が来た。
晋太郎としては、まったく身に覚えがないので、容疑者の可能性があると言われても困る。
元来のんびりした性格なので、やってないことをやったと言われとも、やってないと言うしかなかった。
特に危機感もない。
ある日突然会社に警察がやってきて驚いた。
ただでさえ驚いたのに、名指しで呼び出されて、会議室に連れていかれた。
上司で先輩である牧村が付き添ってくれた。
牧村は晋太郎自身よりも過剰に反応した。
晋太郎が犯人だなんてありえない。
証拠があるわけでもなく、会社に押しかけるなんて警察は疑われる側の、そしてその人間が犯人じゃなかった時のその後への配慮がまったくないじゃないか。
穏やかな口調ではあったが、厳しく責められた警察が気圧されていた。
「牧村さん、どうしちゃったんすか」
「どうもしない」
晋太郎は牧村を心から信頼していた。
入社3年目の晋太郎は新入社員の時から、牧村の部下として仕事をしている。
だが、ここ数ヶ月、その関係は形を変えていた。