Grim Saga Project

緊急と時間と憂鬱と 10話

 
 
 
 
 
「警部…、同一犯、ですね」
 
 
 
「だな」
 
 
 
 手口が同じだ。
 8日前、5歳の男の子が殺された。
 
 ここから1kmも離れていない場所。
 絞殺。
 手袋をしているが、大体成人男性であることはわかっている。
 もちろん指紋は取れない。
 死亡推定時刻は午後8時。
 死体は申し訳程度に隠されていて、殺人直後に逃走する時のことぐらいしか考えていない。
 
 今回もほとんど同じ。
 革手袋の繊維を鑑識に回すだけでも同一犯の裏は取れるだろう。
 時間も場所も似たようなもの。
 被害者は9歳の女の子であったことから、殺害対象は子どもであれば誰でもいいのだろう。
 
 近所なので、一人目と二人目の被害者に繋がりがないとは言い切れないが、おそらく関係ない。
 一人目で関係者の線も洗ったが、可能性は薄い。
 そもそも5歳で殺されるほどの怨恨が生まれるというのがどういう経緯なのか想像もつかない。
 両親の慟哭と憔悴は今もひどくなる一方で、見るに堪えない。
 もちろんこの両親の人間関係周辺も調べたが、特に何も出て来ない。
 
 殺人の捜査に先入観ほど邪魔なものはない、とわかっていても今回の事件は無差別殺人だと考えざるを得なかった。
 早く捕まえないと、三人目の犠牲者が出る。
 
 姫森神菜は焦りを覚えた。
 しかしすぐさま切り替える。
 焦っても事態は好転しない。
 次にすべきことを頭の中で箇条書きにし始めた。