緊急と時間と憂鬱と 08話
「お。みんないた」
私たちの他に、既に二組ほど客が入っている。
光平はこの日、9人目の客だった。
「よう、光平。
なんか久しぶりだ」
真っ先に大気が声を掛けた。
「おう!どうした。
一週間も来ないなんて珍しいじゃねーか」
マスターが重ねる。
「あ、オレそんなに来てなかったっけ。
マスター、コーラちょうだい」
間の抜けた返事はいつもの光平そのもの。
私はなんだか安心した。
あまりにいつも通りなので毒気を抜かれた。
何かあったのか聞く気もしない。
未知も大気も似たような心境だったんじゃないかと思う。
この後はいつもと同じ。
みんなで取り留めもなく何時間か話して、それぞれ都合の良い時間に店を出る。
和やかなムードだったが、大気が時折鋭い目をしていたことに私は気付いていた。
とにかく今は普段の光平。
また、おかしくなったらその時に考えよう。