緊急と時間と憂鬱と 05話
大気は頭の回転が早い。
未知も優秀な頭脳の持ち主だというのは周知の事実だが、大気はまた一味違う。
正確で論理的な思考と、閃き・直感力にも長けていて、物事を良く見ているし、知っている。
学業の範囲に留まらず、生きる力や判断能力が高いのだ。
総合力、とでも言えば良いだろうか。
加えてイケメンなのだから非の打ち所がないとはまさにこのことかもしれない。
とはいえ、頭の良い人間や何かに優れた人間というのは、往々にして変わり者だったりする。
大気もご多分に漏れず、その部類に属するとは思うが、私の知る限りその傾向が表面化しているのは「興味がない」という理由で高校卒業後に自らフリーターの道を選択したことぐらいだ。
「未知、なんかあった?」
大気が質問を一つ。
「わかんない」
「ふーん。不気味だなぁ。」
未知は3ヶ月前に、兄を亡くした。
未だにそのダメージから立ち直ることが出来ていない。
それもそのはず。
未知の兄への愛情は異常だった。
未知は頭脳明晰・容姿端麗だが、お嬢様育ちのせいか、常識はずれだったり、突拍子もない発想や行動だったり、不思議な金銭感覚だったりでよく周囲を驚かせる。
最近の未知は笑うことも減り、しっとりと美しい静けさに包まれていた。
未知が、本日三人目の客だった。