Grim Saga Project

緊急と時間と憂鬱と 02話

 
 
 
 
 
 短大の廊下。
 高いヒールは好きじゃないけど、歩くとカツカツと鳴るノック音は好きだった。
 だから普段は楽なスニーカーを履くことも多いけれど、学校の日は低めのヒール。
 
 後ろから軽快な足音が近づいてきた。
 振り向かなくてもわかる。
 未知だ。
 
 予想通り、私のすぐ後ろで足音はピタッと止まった。
 
 
 
「ねえ」
 
「ん」
 
「今日も行く?」
 
「どっちでもいいよ」
 
「じゃ、ちょっと付き合って」
 
 
 
 理由もなく行く方がフツーだから、むしろこういう誘われ方は珍しい。
 なんだか少し嫌な予感がした。
 
 
 
 今日は午前中しか講義がなかったので、午後の割と早い時間からいつものところに行くことにした。
 
 
 
 ~ BAR: Twilight Wing
 
 
 
 それがいつものバーの名前だった。
 
 
 
「お?今日ははえーな」
 
 
 
 まだ店は開店前だが、構わず入れてくれる。
 いつものレモネードと小さな皿に乗ったお菓子の盛り合わせが出てきた。
 おやつだそうだ。
 
 
 
「珍しいもの出すね」
 
 
 
 余りもんだ、と言いながらマスターは店の仕事をしていた。
 小さな店で、私たちはいつも大した額を支払わないけど、いつもパラパラ客がいるので、それで成り立っているんだろうか。
 
 お菓子をつまみ、未知を待つ。