Grim Saga Project

時空と人と不穏と 24話

 
 
 
これは私と光平が取り組んだトラブルの一つ。
ちょっとしたお話だ。
 
ただ、その中でも比較的規模は大きいといえる。
定義としては関係した人数が多い、と捉えて差し支えないと思う。
 
「フー、よくあのオヤジさん連れてきてたな」
 
「光平がああやって無駄に真崎を刺激する可能性を考えたら、あそこに私一人じゃ危ないでしょ」
 
「すんません…」
 
「でもあの芝居は名演技だったなあ」
 
「ホントにね」
 
警察と言って真崎にトドメを差した男は、知人だった。
協力は渋っていたけれど、事情を話したら黙ってついてきてくれた。
桐島先生に感謝されてまんざらでもなさそうな腑抜けた顔をしていたのは気に入らないが、リスクヘッジの価値を考えればまあ許容範囲と言って良い。
 
その後、本物の警察に引き渡された真崎は実行犯となった女生徒たちと私・光平・桐島らの話を聞いて、拘束の後逮捕となったようだ。
更に薄っぺらい恋人たちが奇妙な連帯感で真崎の罪を告発し、自分たちは被害者だという顔をしていたのを見て、なんとなくガッカリしたのを覚えているけれど、そんなものなんだと思う。
 
トラブルメーカーにもほどがある光平だけど、もしかすると考えようによっては、今回の事件に早々に目をつけたことは評価に値するのかもしれない。
とにかく私は、あの万年筆の力を借りたことで限界まで疲労した。
 
もうこりごりだと思いながら、またトラブルが持ち込まれる。
それが私の日常なのだと、半ば呆れつつ諦めざるを得なかった。
 
だけど。
この時はまだ平和だった。
もしかしたら幸せな日常だったのかもしれない。