Grim Saga Project

時空と人と不穏と 23話

 
 
 
「そこまでだ!」
 
威厳のある声が緊迫した空間を切り裂いた。
真崎の動きが止まる。
私と同じ電波塔に隠れていた男が飛び出して叫んだ。
 
「警察だ。真崎紘夢、暴行の現行犯でしょっぴかれたくなきゃおとなしくしろ」
 
真崎はその場に崩れ落ちた。
 
 
 
ユミは真崎の恋人だった。
一緒に出て来た女子生徒たちも同じ。
女性に好かれやすい真崎は女子生徒を何人も薄っぺらい恋人にしていたのだ。
 
彼女たちが実行犯。
いずれも被害があった各クラスで被害者の後ろの席に座っていた生徒である。
真崎が授業を盛り上げている隙に、前の席の女子生徒のカバンに手を伸ばして財布をスッていた。
真崎は英語の授業と称し、手品を披露することもあったという。
バッグの中にポイっと財布を入れておく傾向から、被害者も女性でなくてはならない。
つまり条件の一つとして、座席の最後部に実行犯となる真崎の恋人、その前の席が被害者の女生徒、という配置が必要だったのだ。
 
盗んだ金は各共犯者と遊ぶために使っていた。
快楽犯罪の類だと言える。
様々な条件や証拠・情報は、このような犯行部隊で構成されている可能性を示唆していた。
逆に言えば、個人での犯行の可能性を消すための仕組みが強過ぎて、こういった形しか残されていなかった。