時空と人と不穏と 08話
「犯人の目星がついたのですが、証拠がありません。協力していただけないかと思いまして。」
「ほう。聞かせて」
依頼したのは簡単なこと。
私は英語教師の真崎紘夢の席に目線をチラッと移す。
席には誰もいない。
既に帰宅しているようだ。
彼が犯人であれば今回のように、事件が起きた日はすぐに帰宅するはず。
証拠のサイフを所持しているためだ。
なので、午後の授業終了後、彼が速やかに帰ろうとしたら、さりげなく引き留めて欲しい。
それだけだった。
おそらく、これまでの事件も証拠を握っている時間を最小限に留めるために、犯行を行うのはその日の最後の授業のはず。
そういう日に真崎の動向を気に掛けて、速やかに帰宅しようとしたら引き留める。
可能だろうか?
出来れば彼をデスクから引き離してくれれば、私か光平が真崎のカバンの中をチェックすれば良い。
ただし、他の教師に気づかれないように、だ。
という話を桐島にした。