Grim Saga Project

心想夕戯 ~the fob watch ferrying memories
 夕闇に友想ふ ~friends

 1-18. 万事休す ~be done for

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 まただ。
 一瞬のまどろみ。
 今度はわかった。
 
 想飛針だ。
 今度は夕華だけじゃなく、私までも助けてくれた。
 
 小学校の屋上。
 隣には眠っている夕華と、担任であり黒幕の木崎に操られている香田七海。
 最悪の結末を迎える、まさに直前。
 
 
 
 どうすればいい?
 もうすぐ木崎がやってくる。
 
 どうするのがベスト?
 夕華を助け、できれば私も助かり、更に望むなら香田も救いたい。
 木崎を許すことはできない。
 
 夕華が眠っている。
 逃げることはできない。
 
 結局木崎はここにいる私たち三人を全員始末する気だ。
 香田に伝えたところで信じるはずもない。
 絶対絶命。
 
 悔しい。
 このまま終わらせてたまるか。
 
 いつの間にか手の中に想飛針がある。
 疑問を抱くこともなく、私は強く強く想飛針を握りしめた。
 
 悔しいよ。
 許せない。
 ふがいない自分が。
 
 イヤだ!
 こんな終わり方はイヤだ!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 あなたの強い想い。
 受け取ったよ。
 想。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 え?
 今のは…。
 
 
 
 私が想飛針の声をはっきり聞いた、初めての時。
 
 
 
 手の中の時計の声だと、なぜかわかった。
 私は思わず両手を重ねて差し出すような形で、握っていた手を目の前でゆっくりと開く。
 
 なぜだろう。
 懐中時計なのに。
 私には、優しく微笑んで見えた。
 
 
 
 
 
 
 刹那。
 
 想飛針が凄まじい光を発した。
 
 
 二筋。
 
 一つは、私の正面。
 一つは、私の顔のすぐ横を通って後ろ。
 
 一瞬の出来事。
 しかし私は見た。
 
 正面にほとばしった光の筋は、木崎の額を貫通したのだ。
 
 おそらく香田も同じだったのだろう。
 二人はスローモーションのごとく、ゆっくり倒れた。