Grim Saga Project

心想夕戯 ~the fob watch ferrying memories
 夕闇に友想ふ ~friends

 1-16. 類は友を呼ぶ ~birds of a feather flock together

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「やっと来た」
 
 
 
 
 
 香田がボソッと言った。
 私は実は相当気を張っていたらしい。
 香田と夕華がいる安心感も手伝ってか、私はほんの一瞬眠っていた気がする。
 
 屋上に上がってくる靴音が聞こえた。
 漠然とした予想が裏切られた。
 出口から出て来たのは木崎一人だった。
 夕華の拘束場所を確認した後、ゆっくりとこちらに歩いてくる。
 
 
 
 一人…?
 
 
 
 ごっ!!
 
 
 
 鈍い音と同時に頭に強い衝撃。
 
 え?
 
 
 なに…?
 
 
 
 熱い。
 
 
 
 頭が熱い。
 
 
 
 やっと自分が倒れたのだと気付く。
 無様に地面に転がった。
 倒れたまま、左手で後頭部に触れる。
 感覚が麻痺している。
 よくわからない。
 が、何やらどろっとしたものが手についた。
 
 無意識にわかっていた。
 ゆっくりと手を顔の前に持ってくる。
 真っ赤だ。
 
 
 
 かろうじて振り向いた私が見たのは、石を手にした香田七海だった。
 
 
 
 倒れた私に一瞥もくれず、木崎が横を通り過ぎる。
 目が閉じそうだ。
 私、殺される…。
 
 木崎はポケットから小ビンを取り出した。
 ハンカチに何か液体を染み込ませて、まだ寝ている夕華に吸わせる。
 
 
 
 
 
 「香田さん、結城さんを縛って」
 
 
 
 
 
 ぽんとロープが投げられる。
 香田がそれを拾って、私に近寄る。
 
 ごめん、夕華…。
 助けられなかった。
 
 
 
 突然香田がもがく。
 すぐにその動きは緩慢になり、彼女も倒れ込んだ。
 私のすぐ隣だ。
 
 木崎だった。
 香田にも薬を吸わせたらしい。
 
 
 
 
 
 「下らないヘマするから殺す人間が増えたわ」
 
 
 
 
 
 木崎が吐き捨てるように言った。
 
 
 
 
 
 「な、なん、、で…」
 
 
 
 
 
 力を振り絞り声を出した。
 木崎にも聞こえたらしい。
 
 突然木崎が笑いだした。