Grim Saga Project

心想夕戯 ~the fob watch ferrying memories
 夕闇に友想ふ ~friends

 1-9. 闇夜に豆鉄砲 ~a shot in the dark

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 私一人でやる。
 夕華を助ける。
 犯人を捕まえる。
 
 
 
 まだ考える時間はある。
 
 まず犯人について。
 誰?
 どうして?
 わからないのはこの二つ。
 いつ(仮定を含むが)、どうやって、は既に知っているわけだ。
 
 “誰か”を知るには“どうして”、つまり動機を手掛かりにするしかない。
 未来の記憶では特定できなかった。
 今までまったく学校に興味がなかったが、幸い最近少し自分の中で変化があった。
 クラスの様子を多少は見てきたのだ。
 
 動機が私にまったく見えていない可能性はあるが、今はとりあえず思い当たる人間を挙げてみる。
 
 
 
 ん…?
 ふと、何かが頭をよぎる。
 胸に何かがひっかかる。
 なんだろう。
 
 
 
 まず、田嶋翔。
 秀才でスポーツマン。
 サッカー部だったかな。
 甘いルックスでモテる。
 が、昔夕華にコクってフラれたらしい。
 その時田嶋は怒り出した。
 つきあわなくて良かったと思った、と夕華が話していたことがある。
 
 
 
 次に、桧山栄太。
 目立たない男だ。
 暗いわけでもない。
 夕華に想いを寄せていることを、なぜかクラス中が知っているらしい。
 一番最後まで知らなかったのは、私かな。
 愛情が屈折したのだろうか。
 
 
 
 香田七海。
 クラスの女子のリーダーのような存在。
 ルックスはずば抜けて良い。
 手足が細くて長い。
 容姿端麗、万能型。
 夕華をライバル視しているが、人望で劣る。
 表面上は何も見せていないが、夕華を鼻にかけていて、何かのきっかけで憎悪が限界を越えたかもしれない。
 
 
 
 パッと思い付くのはこの三人か。
 
 いるのだろうか。
 この中に。
 犯人が。
 
 記憶の世界を思い出してみる。
 夕華は結局犯人の顔を見なかった。
 突き落としの直前、犯人は顔に袋を被っていた。
 
 よく思い出せ。
 手掛かりがあるはずだ。
 
 服装は学校のジャージだった気がする。
 そんなに体格は良くなかった。
 むしろ小柄、かな…。
 
 
 
 また何かが引っ掛かる。
 
 …ジャージ。
 これは学校指定のものだ。
 クラスメート、もしくは学校関係者である裏付けになりそう。
 
 引っ掛かりの原因ではなさそうだ。
 
 ここまで考えたところで、学校が見えてきた。
 午前七時半。
 普段の私では考えられない時間だ。
 
 あとは教室で考えることにする。
 クラスメートの仕種にも注意を払いつつ。