心想夕戯 ~the fob watch ferrying memories
夕闇に友想ふ ~friends
1-4. 病は気から ~shadowing
何度目?
ううん。
数えたくもない。
部活。
塾。
他にも色々あったはず。
どんな理由にしても最近帰りが遅い。
それ自体は辛くもなんともない。
尾けられてる。
誰かいる。
誰?
どうして?
何のために?
初めは気のせいだと思った。
初めはごくたまにだった。
少しずつ確信に変わる。
少しずつ頻繁になる。
すごく嫌。
気持ち悪い。
この一週間は毎日だ。
何度か正体を暴いてやろうと思った。
角を曲がってすぐ身を隠してみたりした。
でもダメ。
どうしても相手が一枚上手。
今のところ、何もされてはいない。
繰り返すうちに犯人捜しをする気力もなくなってきた。
気持ち悪さに恐怖心が混ざるようになってきた。
警察に相談しようかとも思った。
信じてくれないだろうからやめた。
親に相談しようかとも思った。
なんだか恥ずかしくてやめた。
最近少しずつ心を許し合うことができるようになってきた唯一本当のトモダチ。
話そうとしたけど、うまく言えなかった。
次はちゃんと話そう。
彼女は何て言うだろう。
何故だか少し微笑んでいる自分。
もっと仲良くなれるといいな。
素直にそんな思いが頭をよぎる。
子どもみたい。
自分で可笑しくなった。
ふと我に帰る。
え?
気付いたときには目の前が真っ暗になってた。
痛い…
頭が痛い…
目が開かない。
身体に力が入らない。
あれ?
もしかして…
アタシ、死んじゃうの?
イヤ。
絶対イヤ!
どれくらい経っただろう。
倒れていた。
そう。
ここはいつも通る公園の階段。
突き落とされたんだ。
とりあえず、痛む頭でそこまでわかった。
いや、もう一つ。
生きてる。
死ぬかと思ったことを思い出してゾッとする。
ビクッとして、反射的に辺りを見回す。
…誰もいない。
小さく息をはく。
安心した。
辺りは暗い。
頭も腕も、いや、身体中痛い。
でも安心したせいか、だいぶ落ち着いてきた。
脳の回転速度が上がる。
突き落とした力は強くなかった。
殺す気はなかった?
こうして生きているし。
きっとそうだ。
いきなり悪質化した。
姿を見られるリスクを冒してまで行動に出た。
どうして?
明日絶対彼女に相談しよう。
幸い大怪我はしていないみたいだ。
複雑な気持ちで歩き出す。
いつもより少し早足で。