Grim Saga Project

遥一閃 07 閃

 
 
 
一瞬だった。
振り返った瞬間の出来事は、すべてがコマ送りのようだ。
そしてそのすべてが信じられない、夢でも見ているような奇跡である。
 
ロミによって、投げ入れられた槍は数体のオーガを紙きれのように貫き、巣の奥に消えた。
倒れていたレヴィンの右腕が、糸に吊られるように弱々しく持ち上がり、槍がその手に収まる。
 
直後にまばゆいばかりの光を発し、周囲のオーガが干からびるようにバタバタと倒れた。
呆気に取られていたデュアルオーガに向けて、その右腕が槍を放つ。
稲光のように、横一閃の筋が走り、デュアルオーガがゆっくりと崩れ落ちた。
 
さらにその奥から、ユーリとウェインか駆け出してきた。
デュアルオーガより奥で何が起きたかまでは見えなかったが、おそらく見張りのオーガも紙切れのように貫き、牢まで破壊した、ということなのではないだろうか。
 
そして、レヴィンが立ち上がっていた。
胴体が切り離されそうだったはずなのに。
こちらを振り返らずに、ユーリとウェインの頭を一撫でした後、ゆっくりと巣の奥に歩いていった。
 
ユーリとウェインが、私とロミの元に駆け寄ってきた頃、闇の奥からレヴィンが戻ってきた。
その手には槍が握られていたが、なぜか形が違う。
異様な長さに見えていた槍が、けして身長が高い方ではない私の背丈と同じぐらいなのだ。
一体どういうことだろう。