遥一閃 04 発
なんだよ、このばけもの。
でかい。
ちからがつよい。
はやい。
かたい。
でもたぶんあたまがわるい。
ユーリねえちゃんもこわいとおもう。
ぼくもこわい。
でもぼくたちもそこらのこどもじゃないんだぞ。
このまえからむらにきてるやさしいにいちゃんとおもしろいねえちゃん、たすけにくる。
ロミもくる。
だからだいじょうぶ。
ユーリねえちゃんはぼくが、これからなにがおきるかすこしわかることをしらない。
じぶんでどうにかしようとしてる。
むりしてさきにころされたらだめなんだ。
ねえちゃんはたぶん、すこしだけだれかのうごきをとめるちからがある。
でもこんなにいっぱいばけものがいるばしょじゃだめだ。
にげきれない。
いまはみはりがひとりだけど、ここからでるまでにたくさんいる。
†
アタシは偉大な魔術士と称えられたハイネの娘だ。
絶対にウェインを連れてここから脱出してみせる。
オーガ一体一体なら、どうにか動きを止めながら逃げきれそうだ。
だけどこの巣には、大量にオーガがいる。
アタシが動きを止められるのは一体ずつだし、一度に少しの時間しか止められない。
待つ?
いや、手遅れになってから後悔するのはイヤだ。
とにかくやるだけやってやる。
すぐに食われるのかと思ったらそんなことはなかったので、とりあえずホッとした。
しかし、やられるのは時間の問題なのだ。
行こう。
立ち上がろうとした時、うしろから服の裾を引っ張られて、また座り込んだ。
†
「ねえちゃん、ダメだよ。」
「このままここにいたらあいつらにやられちゃうんだよ!」
「だいじょうぶ、やられないよ、うごかないで。」
「なんでそんなことが…。」
「みえるから。」
「え?」
「ねえちゃん、てきのうごきとめられるでしょ。それとおなじ。」
「ウェイン、もしかして未来が見えるの…?」
「うん、すこしだけ。」
「…わかった。」