Grim Saga Project

遥一閃 01 斬

 
 
 
これはダメだ。
死ぬ。
胴体が繋がっているのが不思議なほど、オレの身体はばっくりと斬り裂かれた。
尋常ではない量の血が噴き出したし、下半身の感覚はあるのに動かない。
仰向けに倒れた状態から、どの程度の深手なのか首を上げて確認するだけの余力すらない。
 
周囲の音が遠のく。
すぐそばにしゃがみ込んだミアが、泣きながら叫んでいる…、と思う。
ああ、悪い。
どうにもならなかった。
いや、しかし、ミアだけは逃がさないといけない。
この状態のオレが、ミアをこの場から逃がす方法はあるだろうか。
 
そこそこオレは強い。
戦闘は好まないのだが、ハンターという仕事を日々こなす中で必要不可欠だったから、そしてここまで生きる中で強くなければならなかったから、強くなった。
ミアを死なせるわけにはいかないし、あの村の人たちも子どもたちも守りたい。
どうにか、この目前に立ちはだかる、オレの身体を斬り裂いた怪物を倒す、いや、ミアを村まで逃がせれば。
しかし、まったく歯が立たなかった怪物、デュアルオーガは図体がデカく、パワーが並外れているくせに、オレの三倍は速く動く。
一瞬足止めした程度では無意味だ。
 
首が二つ、顔も二つ、太い腕が四本。
足も四本。
およそ人間から掛け離れた怪物、デュアルオーガなんて反則だろ。
とはいえ、実在したのだからどうしようもない。
取り巻きの怪物はオーガだ。
その一体一体ですら、倒すのに苦労するほど肉体は強靭だったが、オーガの群れであればどうにかなるかと思った。
何十体、何百体といても、知略を巡らせればたかが脳筋の怪物たちを出し抜くことはできるはずだった。
割と慎重な性格だと自認してたんだけどな。
これだから世の中わからない。
 
ミアと出会った頃から今までのこと、幼い頃のことまでが頭の中を駆け巡る。
やべえ。
これ走馬灯ってやつじゃねえか。
そりゃそうか。
真っ二つになりかけてんだ。
思い出に浸ってるヒマがあったら、どうにか一矢報いてミアを…。
いや、でももう意識が…。
 
ミア…。
ユーリ…、ウェイン……