Grim Saga Project

V05. 宝飾短剣

 
 
 
これまでなんとなく夢の中のお話というか、現実味もあまり感じられず、私の神さまに似た、ヒトとは異なる存在たちがほかにもいて、そういう神さまたちともお話をする機会が出てきたり、急に自分の住む世界の見え方が変わり始めたりして、あまりついていけていなかった。
カナメさん、瞬、凛。
初めてちゃんと友達と呼ぶことに抵抗がない人々。

瞬・凛の友人であるという、一人の女性からはまた違った衝撃をいくつも受けた。
まずひょうきんというか、カナメさんたちとは違う独特の明るさがあって、テンションに驚いた。
もっと驚いたのはその能力で、なんと彼女は瞬間移動ができる。

これが一気に私の夢心地気分と現実をなぜか繋げる要素になったような、妙な気持ちにさせた。
彼女が腰の辺りにぶら下げた袋から、煌びやかな短剣を鞘ごと取り出して見せてくれた瞬間、周囲に花畑が広がった。
先日の漆黒の世界とは真逆だなと思ったけれど、あの経験があったから今回はすぐに自分がその器との意識の繋がりの世界に舞い込んだことを自覚できたのだとも思う。



「お花…。」

「あら、ミアじゃない子と繋がっちゃったのね。不思議。」

「あ、はい。こんにちは、お花の神さま。」

「ふふふ。面白い。私は意識の接続を解放していないはずだから、貴女が特殊なのね。」

「そうみたいです。私、色んな神さまとお話できるみたいです。」

「へえ。これは珍しい。ミアとの時間をじっくり作るのも悪くないけど、これはこれで刺激的ね。たまにはいいわ。」

「あの、ミアさんとはあまりお話されていないんですか?」

「そうね。貴女のような、無意識化で私たちと接続できてしまう子は私の知る限り初めて。そうでない子とはね、まず会話をするにもマスタと認めるにも相応の関係や時間を置くものなのよ。」

「そうなんですね。でもミアさんは神さまの力をすでに使いこなしているように見えました。」

「うん。そうね。この子のことは信頼してるわ。悪い子ではないし、力の使い方も上手。だけど、もう少し自分の殻を破るまで私は見守らなきゃ。」

「それまではお話はしない?」

「うん。そう。なんでもかんでも教えればいいというものではないの。自分で気付かなきゃいけないこともあるから。」

「なるほど…。私の神さまもそんな風に考えているのかなあ。」

「貴女は私たちを神と呼ぶけれど、厳然たる定義があるわけではないし、どちらかと言えば人間のように個性がそれぞれあるので、貴女の神さまがどう考えているかは私にはわからないわね。」

「神さま同士でお話をすることはないんですか?」

「できないことはないけれど、現状においては積極的ではないかな。私たちグリムの器のほとんどがそうだと思うわ。」

「どうしてですか?」

「うーん、理由はそれぞれかもしれないけれど、そこは共通認識に近い印象ね。いくつかあるわ。まずは、特に理由がないこと。貴女もおそらく知っての通り、私たちグリムの器は人間にとって、強力過ぎる力を持ちます。だからこそグリムの器同士が結託してしまうことは、この世界に大きな影響を与えすぎてしまう。それをおそれて密やかに在り続けることを選択していると認識しています。もちろん中にはそうでない者もいるけれど。もう一つは、私たちに与えられた時間が長過ぎることが挙げられる。誰かと共に生きるのに、終わりなき時間を持つ者同士は向きません。また、ヒトのように恋愛や性交渉を経て、種の存続を保とうとする意図がないからかもしれない、と私は考えているわ。」

「なるほど…。私たちと同じ物差しで考えてはいけないのですね。丁寧に答えていただいて、ありがとうございました。そうかあ。じゃあ神様は誰かを好きになる、ってこともないのかな。」

「いえ、誰かを好ましく思う心自体はもちろんありますよ。」

「好ましく感じる人間をマスタとして選ぶのですか?」

「うーん、貴女たちの、いえ、人間の言う恋愛的な好みとは異なるわ。選択の際に重要になるのはヒトの言葉で言えば近いのは、そうね…、相性ね。」

「その相性はどのようにわかるのですか?」

「まずはその人間の個性・性格の好みはあると思う。私たちはそもそもグリムの器、人間に使役されることを目的として作られたから、やはり使い手となるマスタが私たちをどのように使おうとするか、というのが大きいの。それともう一つ、貴女は特殊だけれど、今このように私たちと繋がり会話をするというのは誰とでもできることではないわ。接続には波長の相性のようなものがあって、私たちもなるべくその意識の波長を合わせるけれど、誰とでもうまく繋がれるわけではない。だから自動的にその波長をそれぞれの器、私たちに自動的に合わせて接続してしまう貴女は異質なのです。」

「私、そんなことしてたんですね。自分では気付いていなかった。あ、んー、でも言われてみればしているのかもしれない。まず神さまたちの存在を感じるんです。今はたくさん近くにいるけれど、もっと前はもう少し少なかったから、あ、近くにいるな、って感覚があって、そこに気持ちを向けると繋がるんだけど、それがきっと私にしかできないことなのかもしれない。」

「ええ、そうね。おそらく仮に訓練したところで、できるようになる者は少ないでしょう。」

「私は人間ではない、と言われました。半分人間でもう半分はまた別なのだそうです。」

「なるほど。それはしっくり来るわ。」

「お花の神さまは、私の半分は何だと思いますか?」

「うーん、面白い質問。断言はできないけど、私たちじゃないかしら。一番説明がつくのは、私たちと波長を合わせられるということは、貴女の半分が私たちだから、という理屈ね。」

「グリムの器と人間のハーフって、あり得るのでしょうか。」

「器によっては、とてもヒトという種に好意的なものもある。個性・能力にも依るけれど、人間の姿形をしてこの世界に存在している器がいるかもしれない。私は少なくとも知らないけれど。原子・分子レベルで人間とグリムの器が子を成す可能性を考えた時に、限りなく低そうではあるけれどゼロではないわ。」

「そんな可能性が…。でもあくまでもそれは可能性の一つですものね。そうと決まったわけではない。」

「はい。その通りです。また、出自は気になるものかもしれませんが、貴女は貴女です。特異性についても同様。あまりその原因を追求し過ぎなくても良い、と私は思います。」

「それもそうですね。私は、どんな理由で誰から生まれたとしても今の私でなくなることはないはず。」

「はい。とはいえ、半分人間なら気にはなるでしょう。私に力になれることがあるなら、また相談には乗りましょう。」

「ありがとうございます。またミアさんにもお会いしたいですし、その時にはもっとミアさんとお花の神さまがお話できているといいな。」