V04. ヴォイド
みんなと行動をする中で、どうやら思った以上に瞬や凛の交友関係は広いようで、様々な仲間がいることがわかってきた。
その中の一人が持つ器は私にとってとても異質で衝撃的だった。
闇。
黒。
無。
突如目の前に漆黒の世界が広がった。
おそらくそう感じただけなのだけれど、これはいつもの器と意識が繋がった時の感覚の亜種だと気付くまで少しかかったと思う。
だけど、この闇に包まれてから、時間の経過を感じることも能わず、実際にはどの程度の時間が経ったかはわからない。
30秒かもしれないし、3時間かもしれない。
おそらく三日ということはない。
「ほう。貴様、我が見えるな。」
「え、あ、はい。」
「愉快だな。」
「珍しいですか?」
「そうだな。この時代でマスタと認めた以外の人間と言葉を交わすのは初めてだ。」
「アナタも神さまですね。」
「ふむ。アナタ"も"か。貴様は何者だ。」
「私は、人間です。多分。普通の。」
「なるほど、自らの成り立ちを知らぬ、か。貴様、幼き頃の記憶が無かろう。」
「え、…?」
「我はすべてを知るわけではないが、一柱ではある。存外やむを得ぬ知見もあるが、まさに詮なき。貴様はただの人ではあるまいよ。」
「そうなのですか…?ただ子どもの頃のことをあまり覚えていなくても、それは普通のことかなって思ってました。」
「うむ。操作されているかとも思うたが、そういうわけでもないか。不思議だな。交わり者か。貴様らの言葉で言うところのハーフだな。しかし、何と人間のハーフかまではわからぬ。半人半妖というわけでもなさそうだ。」
「え?…ん、と、半妖って…妖怪。ではない。何なのでしょう。」
「愉快だ。確度が最も高いのは半神であろう。うむ、または器か。」
「黒くて怖いと感じたのに、今は違う。アナタも不思議です。ひんやりとして冷たい闇かと思ったら暖かな黒。」
「貴様が相手だと部が悪いな。せいぜい虹の妖精から話を聞くと良い。」
「妖精…、半妖。」
「たしかに、半妖。しかし、いや可能性はゼロではないな。」
「漆黒の世界が広がった時、話ができるとは思わなかった。アナタのような神さまもいるんですね。」
「奇異かつ稀有だな。諚かもしれぬが。貴様のような存在があるとは、我も感知していなかった。だからこそ愉快である。」
「アナタは神さまの神さまですか?」
「発想が飛躍する。それは我が決めることではない。」
「んー、そっかあ。そういえばこの前もそんな話をしたばっかりだった。ありがとう、黒い神さま。」
「礼は無用だ。筋合いがあるまい。」
「ううん。だってアナタには私と会話しない選択肢もあったはずだから。」
「ミクといい、ミチといい、貴様といい。たしかに妖精の言う通り、興味深い人間もいるものだ。貴様については定義次第かもしれぬが。」