V03. 鉄の先年桜
凛ちゃん…の、神さま?
あれ?
意識、繋がったと思ったけど、違ったかなぁ。
ん、…繋がってる、よね。
ごめんなさい、アナタはお話をしないタイプだったのかな。
凛ちゃんとしか話さないのかな。
迷惑だったかもしれません。
えー、と、そしたらちょっとだけ。
凛ちゃんをお願いします。
多分凛ちゃんは、とても大変で、苦しくて、ずっと戦っているのかなって。
アナタはそれを支える神さまなんだなって思ったから。
私にできることは少ないと思うけれど、やっとできた大事な友達の一人だから。
私にできることがあるならいつでも教えてください。
なんでもします。
「自分から私に語り掛けることができる人間がいるとは。これは驚いた。」
「あ、凛ちゃんの神さま、はじめまして!」
「貴女の言う通り、凛は苦しんでいる。おそらく、その苦しみは私が解き放つことができないもの。幸い、それでも今はつらさのピークを超えて、少しずつ前を向いている様子。私はほんの少し、凛の戦いに力を貸す程度しかできない。貴女こそ、凛をお願い。」
「うん。凛ちゃんにとって、今はきっと瞬の存在が大きいと思うんだぁ。でも、きっとその次は神さまだよね。」
「どうしてそう思う?」
「凛ちゃんはつらそうだけど、それを支える大きな力が二つ見える。私にはそれが瞬と神さまだなって。」
「貴女は不思議な力を持っているのだな。いや、そもそも私にこうして語りかけることができている時点で異質か。なるほど。」
「これってそんなに特別なことだったんだなぁ。瞬の神さまに教えてもらうまで全然そんな風に思ったことがなかった。」
「世の中には、私たちグリムの器を手にしたい人間が目に余るほどたくさんいる。貴女はこの特殊性をあまり知られない方がいい。」
「あ、そっか。たしかに、ドラゴンさんとかにも知られたらあまり良くなかったな、きっと。わかった。この力が特別だって認めて、それで軽々しく誰かに言わないようにする。」
「ええ。それがいい。」
「神さまはまだ凛ちゃんとはそんなにお話をしていないの?」
「ああ、まだほんの少しだ。」
「ゆっくり、でもいっぱいお話してみてくださいね。」
「そうだな。…貴女はなぜ我々を神と呼ぶ?」
「んー、私が今生きてここにいるのはグリムの器たちのおかげだから。神さまって、みんな同じものを想像しているようで、実は定義が曖昧でしょう?だから、だったら私の神さまは私が決めればいいと思った。」
「ふふ。なるほど。道理だ。それであるなら何も言うまい。神の定義、か。」
「うん。グリムの器にはグリムの器の神さまがいるの?」
「面白い質問だな。答えは、わからない、だ。すべての器と意思疎通をしているわけではないから全容把握もできないし、人間のようなコミュニケーションも取らないのでな。貴女たち同様、共通概念としては存在するが、その概念は人間のものと少し異なるはずだ。」
「へええ。聞いてみたいけど、はじめましてであんまり長話をしては申し訳ないので、次のお楽しみにしておくね。また、お話してください。」
「そうだな。またこのような機会があるとしたらそれも悪くない。」