Grim Saga Project

The Pears 10 - To Be Continued ~ 始まりの兆候

 
 
 
さて、何から聞こう。
この一瞬であまりにも色々なことがあり過ぎた。
約束の時間よりだいぶ早くに来たのに、迷わず俺のことがわかったのはなぜか、とかそういうのは些末だと感じる程度には。

正直なところ、俺はこの時点で目の前の二人の女性に力を貸すのだろうと予感していた。
だから、今慌てて聞かなければいけないことはない。
もちろん疑問は色々あったけれど。

例えば、だ。

なぜ籠のお嬢様と呼ばれているのか。
包帯の遣いは何者なのか。
ラムの姉妹とグリムの関係とは何か。
まだまだいくらでもあるけれど。

直近で聞いておくべきことと言えば、力を貸すというのは具体的に何をすれば良いのか、である。
彼女たちに伝えた通り、この能力の発動は俺自身の意思と直結しないため、思うように操ることはできない。
それでも役に立てるのだろうか。

そんなことを、考えているうちに質問を待ちわびた少女が切り出した。



「あの…、私から一つ聞いてもいいですか?私、どんな風に噂されているのでしょう。」



はは。
噂なんてそんなものか。
当の本人が知らないんじゃ、どれも信憑性なんてないに等しい。

さあね、俺は噂している側じゃないからよく知りません。

そうですか、と残念なようなホッとしたような表情で少女が相槌を打った。

で、俺があなたたちに協力するとしたら何をすればいいんでしょう。

フードに半分隠れた少女の顔が、なぜかパッと明るくなったような気がした。
しかし、言葉を紡いだのはラムだった。



「ナスさん、ありがとうございます!…実は、次のミッションにはあなたも含めて、仲間を総動員しなくては成功の望みが薄いみたいで…」



ん?
ミッション?
仲間を総動員?
またよくわからなくなってきた。



「とりあえず、まずは私のモデルのお仕事に助手としてしばらく帯同して欲しいんです。」



え?
モデルの助手?
話がぶっ飛び過ぎていて、もう頭の中はハテナだらけ。
モデルの助手って何をすればいいんだろう。
探偵ってそういうこともする仕事だっけ。
いやいや、そういう問題じゃない。

ともあれ、まったく新鮮な日々が続きそうだ。