04. 邂逅
私の大切な友人、YとSではないもう一人。
仮にここではXとする。
頻繁に会うことはなくなったとはいえ、ちょっとした特殊な事情で先日会ったばかりだった。
店に入ってきたのはXだった。
昔から独特で異質な雰囲気の持ち主だったのだが、ここのところその不思議な魅力は急激に増しているように感じる。
同性でもドキッとするような仕草や振る舞い、なんというか見た目もそうだが所作の一つ一つが妙に美しい。
Xが二歩ほど進んだところで、私に気付いた。
ハッとしたようだったが、すぐに優しい笑みを浮かべて私の座っている席の近くにやってきた。
"相席してもよろしいですか?"
"ええ、もちろん。"
ふふ、と微笑むXがかわいらしい。
Xが注文をしに行こうとすると、紳士がもうこちらにやってきていた。
どうぞお掛けください、というジェスチャーで示され、Xは上品に腰掛けた。
佇まいは気品に溢れるが、装いは比較的ラフなのがまた特徴的である。
Xは私と同じものを、と注文した。
なんとなくなんでここにいるのか、とかそういうことを聞くのがとても無粋に感じる。
雨のせいか。
お店のせいか。
変に背伸びをするような話も柄じゃないと感じていたからか、ふと思いついたことが口をついて出る。
"最近ものすごくキレイになったよね。"
"え、ホント!?ありがと。"
私は女性であるにも関わらず同性、つまり女性が苦手である。
腹の底を読み合うような独特ないやらしさみたいなやり取りが気持ち悪い。
幾度となくそんな違和感を覚え、かといって異性も得意でもない結果、人見知りという扱いになったが間違ってもいないと評価している。
みな、他者のことをよく見ているな、と思う。
人見知りは間違っていないが、どちらかというと人嫌いとか無関心の方が事実に近そうな気もする。
そんなこれまでだったのにYとS、そしてXは世の中の人間がみんな私が不得意なタイプというわけではないことを教えてくれた。
この三人は、変な気を遣わなくても自然に一緒にいられる関係なのでとても居心地が良い。
"ところでこのお店ははじめて?"とXに聞かれ、頷くと不思議なことを言われた。
"私もまだ数回なんだけど、ここに来ようと思っても来れないんだよね。"