Grim Saga Project

02. 琥珀

 
 
 
私が思うイレギュラーは主に二点だ。
一つ目が常識では考えられない現象。
これはどうやら、もう一人の友人が持つ時計が起こすものらしいのだが、詳しくはわからない。
何度も不思議な経験をさせてもらっているが、貴重と思う反面、そんなに頻繁に起きて欲しくはないなと感じるほどにはスリリングなのである。
どうやら、その時計はグリムの器というものらしい。
ほかにもあるらしく、最近奇妙な知人が急激に増えつつある。
 
もう一つが恋だ。
恋と呼んで良いのかすらわからないのだけれど、ちょっと変わった魅力を持った男性がいる。
彼がどうもこの世界の住人ではない、的な特殊な方のようなのだ。
これも詳しくは理解していない。
ただ、彼と会うことができる機会がとても稀なので、恋人とか結婚とかそういう一般的な発展が望めるような恋ではなさそうなのである。
 
私はただのごく一般的な女子大生だと自認しているのだが、なぜこんなにたくさんの不思議が周囲にあるのだろう。
とりあえず書店を見つけたら入ろうかな、という漠然とした目的を設定したことで、物思いに耽ってしまったようなのだけれど、あまり景色を認識せずに歩いてしまったように思う。
見たことがない場所を元々歩いていたせいか、今いる場所に見覚えがなくても違和感がない。
書店があったかどうかなどまったくわからないのだから、私はよほどぼーっと歩いていたのだろう。
 
どういう道を歩いてこの場所にいるのかもよくわからないけれども、ふと我に帰った時に目の前にあったとても気になるお店は書店ではなくカフェであった。
古民家風カフェというか、レトロな喫茶店というか、フランチャイズではないタイプのお茶処だと思われる。
ふと頭の中で何かがリンクしたような気がした。
琥珀色の液体と結びついた印象は、望んでも会うことができない彼だった。
私はもうふらふらとその店の入り口に歩み寄り、取手に手を掛けていた。