Grim Saga Project

01. 散歩

 
 
 
その日は雨だった。
私は傘に執着がないので、近所のコンビニで買った透明のビニール傘を差している。
無性に歩きたい気分だったので、雨は好きじゃないのだけれど、靴が汚れる不快感よりも散歩することを選ぶ。
 
学校からの帰りに、自宅の最寄り駅と違う駅で下車した。
あまり群れることが好きではないはずの私が、最近仲良くしてくれる友人がいることで、一人でいる時間が少ないように感じる。
今日の散歩気分は、ふと一人の時間ができたことに起因している自覚があった。
 
友人は主にYとS。
もう一人いるのだけれど、進学の道を違えたことで、疎遠気味だ。
仲が悪くなったわけではなくて、彼女とはそんなに頻繁にやり取りをしなくても、良い関係でいられるような感覚があるから安心しているのかもしれない。
 
YかSのどちらか、または二人と一緒にいることが多い。
二人とも大事な友人であるが、おそらく私が一番一人でいることを好むのではないか、と思うぐらいには一緒にいることが普通、というライフスタイルだ。
それはそれで良い。
 
そんななんでもないことを考えながらも、結局一緒にいなくても二人のことを考えていて、わざわざ一人の時間を楽しむための散歩なのにね、と一人おかしくなった。
まあいい。
別に二人のことがイヤなわけではないのだから、それはそれで私もなんだかんだ二人といる日常に慣れ親しんでしまったんだろうとも思う。
 
ところでどこに行こう。
何をしよう。
ただ、何も考えずにゆっくりと歩いているのは楽しい。
雨はそこまで強くもないし、寒くもない。
少し湿気があるので、むしろ急いで歩いてしまったらすぐに汗まみれでべたべたになりそうだった。
 
買い物をしたいわけでもないし、なにか食べたいわけでもない。
カラオケ、選択肢にまずない。
本屋は良いかもしれない。
手芸の趣味はない。
この近くに書店はあるだろうか。
実はあまりこの辺りのことを詳しく知らないから、もし歩いていて書店を見つけたら入ってみようかな、ということで私の中で決着した。