Grim Saga Project

五歩目は勿忘草

 
 
 

 
 
 
一つ思い当たることがある。
検証するには時間が必要だ。
 
もしかすると、ミチの兄、ミライの失踪について、いやわからないが、何らかのメッセージをオレは受け取っているかもしれない。
ミライとは数年前に少なからず共に時間を過ごした。
その中で今目の前にいる女性、ミチについての話は何度か出て来ていた。
 
しかし、おそらくそれは具体的な表現ではなく、曖昧だった。
さらに、ミライは近い将来自分がいなくなるような言い回しをよくしていたことを思い出す。
当時憧れた兄のような存在から、たまに発せられるネガティヴな言葉は印象的だったから、なぜそんなことを言うのか疑問に思っていた。
 
実際にいなくなってからは、自分が置いていかれたような気がして、そんなことはすっかり忘れていた。
今初めて、遠い過去の彼のメッセージを受け取ることができる気がして、妙にドキドキし始めたが、その感覚は胸騒ぎのようにも思える。
 
やたらとはっちゃけた、奇妙なロックやポップな曲ばかり鳴らしていたミライたちのインディーズバンドは、何枚かCDをリリースしている。
当然オレはすべて買っていたわけだけど、その中で一つだけ彼らにまったく沿わないシングルがあった。
 
そう。
二曲収録されていて、二曲とも切なくなるようなバラードで、どうしてこんなにノスタルジィな曲を出すのか不思議だったのだ。
実際にミライに聞いてみたことがある。
 
 
 
「あー、レイにはそう感じられるよな。実際今の俺たちのコンセプトからは真逆を行ってる。だけどさ、俺個人にとってはもしかしたらこのシングルが一番大事かもしれない。またいつかわかる時が来るかもしれないから、その時は聴き直してみてくれないかな。もしかしたら運命が変わる可能性だってある。」
 
 
 
そんなようなことを言われた。
その時は、ただミライらしい意味不明なメッセージと妙にカッコいい感じがして、深く考えなかった。
あの曲を聴かなければいけない。
 
"勿忘草"と"Unknown Future"を。