060 C19 幕切れの余韻
やむを得ず、私はペアの連絡先をケータイで探して、短いメッセージを送った。
このまま終わりにしてしまいたい気持ちは強くあったけれど、面倒臭さや未知への複雑な気持ち以上に、このままにしておいてはいけないことはわかる。
こんなことになるとはまったく想像していなかったが、ペアと連絡先を交換しておいたのは良い判断であった。
反面、リサやリン辺りとも繋がっておけば良かったな、とも思う。
ペアはおそらくあの一団の中心的な立ち位置なのだと思うけれど、色々なことが見え過ぎていて、やや掴みどころがない印象だった。
ペアと比べるとリサやリンの方が、極端な言い方をすれば腹黒さがない。
しかし、もし二人のどちらかの連絡先を知っていたとしても、連絡したのはやはりペアだっただろう。
引っ掛かりはあれど、この内容を伝えるなら一番安全に事を運んでくれるのはペアだろうし、リサに連絡してもリンに連絡しても、結局ペアの耳には入るはずである、というところまでは予測した。
短いメッセージのあと15分ほどして、電話で会話することになった。
事を端的に伝える。
声すらも美しい。
妖艶なため息と相槌が左耳から何度も聴こえてきて、それだけで引きずり込まれそうな錯覚を覚えた。
世の男性がどれだけこの人の虜になったことだろう。
そういえばペアの容姿を初めて見た気がしない。
過去にメディア露出をしていたことがあるのかもしれない。
電話越しの美女は、私が言いたいことが概ねわかったと思う。
そしてこちら側にも無関係ではないので、あちら単独で判断したり行動されることが最善ではないこともわかるニュアンスも伝えた。
未知には話すべきかどうかもまだ私も判断がついていない。
個人的には今回のことはこれで終わり。
だけど、より大きな問題を残したし、禍根も渦巻いた状態が解消されていない。
近いうちにまた何かが起こる。
そんな気がしてならなかった。