Grim Saga Project

057 C17 帰還

 
 
 
サイコメトリの発動条件を明確にする、という課題は残っていたが、おそらくこの旅で俺の当初の目的は果たした。
なんとなく思い描いていた明確な形ではなかったのだが、そういうものなのだと受け入れることが必要なのだとも気付かされた。
 
そうなると真っ先に声を掛けたい人がいる。
人なのか妖精なのかはわからないけれど。
基本的に、こちらから連絡することはなく、というか出来ない。
籠様がそれを拒んでいるというわけではなく、文明の利器を持たない主義のようなので、いつも一緒にいるペアに連絡すれば良い。
 
だが、どうも今回そのアプローチが不適切な気がするのだ。
今回の諸々を整理して考える時間も欲しかったので、この地に来てからアンノウンと何度か行った軽食の店でゆっくり考えることにした。
 
鉄板らしいメニューであるトロピカルアイスティを注文した。
およそ一人で頼んで啜るには不似合いだが、なんとなくこうしろと約定天鎖が囁く。
それでいい。
約定天鎖が次に向かう道に導いてくれる、と言っていたじゃないか。
 
 
 
「お探しの答えが見つかったようですね。」
 
「あ。…籠様、俺は…。」
 
「いえ、わかりますよ。スッキリしました。髪は相変わらずボサボサだけど。」
 
「ああ、まあ結局はまだ追い求め続けなきゃいけないってことがわかった程度だけどな。良かったよ。」
 
「はい。また力になっていただけますか?」
 
「ああ、もちろんだ。その答えを伝えるために、こんな不似合いなもんを飲んでるようなもんだ。」
 
「それは良かった。」
 
「今回の件でも俺は大して役に立ちはしなかった。まあきっかけを作ったのは俺かもしれないけど。」
 
「ヴォイドには驚きましたね。穏便に事が済んで良かったです。」
 
「何でもお見通しか。」
 
「いえ、そんなことはありません。私その場にいただけです。」
 
「え、籠様も来てたのか、あの研究所に。」
 
「元々その予定ではなかったのですが…。ヴォイドがいることがわかって予定を変更しました。」
 
「アンノウンがヴォイドを手にしたのは籠様の計らいか。」
 
「いえ。ヴォイド自身の選択です。」
 
「さあ、伝えたいことは伝えられた。また必要なら呼んでくれ。俺は自分の未熟を痛感したところだからな。まだまだやらなきゃいけないことがある。」
 
「生まれ変わりましたね。お見事です。不文律。」
 
「不文律?」
 
「世の中、明文化されていない決まりばかりですね。」
 
「ああ、そうだな。まったく参るぜ…。」