053 B17 終端の終譚の始まり
自覚したと思っていた自分の中の瞬の存在の大きさは、その自覚とは全然合っていなかった。
瞬が大怪我をしたかもしれない、もしかしたらもっと大変なことになったかもしれない、と考えた時の自分の動揺ぶりに我ながら驚いた。
私にとって、瞬は失うことのできない、もはやかけがえのない自分の一部のようですらある。
落ち着いた。
瞬が大丈夫だとわかって、心底安心した。
そうしたら急に今回の一連の出来事が思い出されてきた。
私が知らないピースを埋めてくれる人から話を聞けないだろうか。
ペアでも尚都でも良さそうだったが、私は梨紗さんの話を聞きたいと思った。
この事件はまだ終わっていないのではないか。
ペアとは行きのドライブ同様、当たり障りのない会話をした。
行きと違ったのは、美愛が助手席になっていたこと、途中で降りたこと、そして瞬が心配だったことで、後部座席で隣同士に座り、膝枕に寝かせていたこと。
だからペアとの会話は途中までは美愛と三人だったし、美愛が降りてからは寝ている瞬を気遣ってペアがあまり積極的ではないようだった。
美愛が降りた後で瞬が目を覚ましたが、大丈夫そうだとわかってからも休むように諭して、寝かせていた。
瞬と私の家に到着してから、瞬にベッドで寝てもらって、家事をし始めてから急に事件に思考が戻ったのだった。
梨紗にメッセージを送った。
いつ頃戻りますか?
ちょっとお話したいです。