052 C15 Think Thank Thing
未知とヴォイドはうまくやっているようだ。
長年の友人だから、振る舞いは大きく変わらないがなんとなくわかる。
何もそれはヴォイドのせいだけではないかもしれない。
そもそもずっと未知を苦しめていた兄の死、実際には失踪だったわけだが、その呪縛からも解放されたのだ。
その影響が小さいはずがない。
そう改めて思うと、今回起きた色々なことはすべて未知に繋がっているし、彼女の人生を大きく変えるであろうことばかりだ。
未知は頭がいい。
ものすごくいい。
一瞬すべてを未知が仕組んだのではないかと疑う。
さすがにそれはない。
…はずだ。
いや、しかし、ヴォイドがイレギュラーだっただけで残りはある意味未知はこうなることを望んでいたことは明らかではないか。
ゼロがきっかけだろうか。
ずっとどうにか成功率を上げて動く方法を模索していたことは間違いがないではないか。
色々考えているウチにちょっと背筋がすっと冷たくなるような感覚を覚えた。
まさにアンノウン。
ねえ、エンデル・フロシェール。
アナタは未知と何か会話したのかな。
うーん、いや、これは答えて欲しいわけじゃないんだ。
そうだったとして、その方法を探りたいわけでもない。
グリムの器の特性も全然知らないし、わからないけど、器とマスタの関係について改めて考えてしまったというか、そもそも私は本当にマスタなのかな。
今までの、それでも十分非現実だった器の存在や関係性は、それでも自分の中である程度の形を作り上げていた。
未知や、ほかにも今回出会ったたくさんの不思議な人々、あの人たちから聞く話や器に関する情報は、大いにエンデル・フロシェールについて再度考えさせられることになっていった。
ゼロも結局グリムの器が何なのかを追って、そもそもここに来たのだと言っていた。
この能力は何のためにある。
この器はなぜここにいる。
私はなぜ選ばれた。
すべて偶然か。
どうしてもそんな風には思えなくなっていた。
グリムの器と向き合い、非常識の中に生きる人々を知ってしまった。
あの妖精と一度話してみたいと思った。
知りたいことがたくさんできた。
未知はこれからどうするのだろうか。
兄・未来を取り戻し、ヴォイドという特別を手に入れて。
その先に何があるのだろうか。
私はまだ彼女と寄り添い歩いて良いのだろうか。