Grim Saga Project

049 B16 Cold Finger is Goddess Heart

 
 
 
暗闇に光が差す。
僕は目を瞑っていたのかもしれない。
眠りかけていたのか。
 
瞼に当たる光で目を開けたのだ。
なんとなくわかってきた。
眩しくなって、光を避けようとしたら自分の首をわずかに動かすことができた。
 
冷たかったはずの何かがほんのり暖かく感じたのは、ずっと触れていたせいか。
左の頬が触れていたのはきっと瓦礫だ。
右腕は動いたが可動域が少ない。
肘から先の曲げ伸ばしが少しできたし、手首も指も動いている気がするが見えないので確証は持てない。
 
どうやら顔が上を向いている。
光を実感したら、なんとなく自分が生きていることも自覚できたら、重力を感じ始めたのだ。
ああ、そうか、凛が僕を助けてくれるんだ。
居場所を教えなくちゃ。
僕は大丈夫だって言わなくちゃ。
 
しかし、なぜか声が出ない。
喉が掠れる。
呼吸も楽ではなくて、何か引っかかるような。
息を吸うにも吐くにも浅くなるのに、むせて咳き込むこともできない不自由さ。
 
ここだ。
ここにいる。
凛…。
………凛っ!
 
少しずつ、光は眩しさを増していった。
やがて僕の暗闇の世界は凛の光がすべて覆って、闇の欠片も見つけられなくなるほどに。
 
僕の右頬に冷たい何かが触れる。
光の中からゆっくりと現れたその細い何かは、疑うべくもない僕の女神が差し伸べた指であった。
するすると伸びてきて、やがて耳の辺りまで触れると頬を掌が覆う。
ああ、これでもう大丈夫だ。
 
とにかく凛が無事だったのならそれでいい。
本当に良かった。