048 A15 リッピントリッピン
崩落した研究所の壁の一部が転がる辺りに、建物の横から回り込んでいく。
オレンジが呆然と立ち尽くしている。
そして堤女史が横たわっている。
アップルが少し離れて瓦礫が転がる辺りにしゃがみ込んで、何かしている。
何が起こっている?
いや、理解するのを拒絶しようとしただけだ。
瞬がいない。
アップルの様子から見て回答は一つ、瓦礫に埋まっている可能性が高い。
なんでこんなことに?
梨紗…いや、またそうやって俺はすぐ頼ろうとする。
梨紗、アップルを頼む。
ペア、オレンジを。
二人は頷くとすぐにそれぞれのもとに駆け寄る。
ペアがオレンジを抱きしめた。
オレンジが唸るような声を上げて泣き出す。
梨紗がアップルに歩み寄る。
「あ、…あ、うぅ、り、梨紗さん。瞬が。瞬を、早く。うううう…。」
大丈夫、瞬は強いの、凛ちゃん落ち着こう、と言って梨紗も凛を柔らかく包んだ。
「籠様、瞬をどうやったら助けられんだ?」
「はい。二つの指輪の力を借りましょう。」
「つっても、俺も梨紗も使いこなせない。」
「いいえ。貴方たち二人はもう十分器に声を届けられます。」
そうか。
具体的な会話ができていなきゃダメなのかと思っていたが、俺たちだって相応の時間を器と少しずつ過ごしているし、いろんな経験を共にしてきている。
もう繋がっている。
ならば、俺たちの指輪よ。
瞬の居場所を教えてくれ。
…!
凛ちゃん、大丈夫。瞬は生きてる。
尚都、あれをどかそう。
声を梨紗と共に聞いて、瞬を埋めている瓦礫を特定、どうにか三つ慎重に動かした。