Grim Saga Project

047 A14 麗しきイレギュラー

 
 
 
あまりにも色々なことが同時に起きすぎていて、処理能力のキャパシティは簡単に溢れた。
梨紗の顔を見て安心したのと同時に、結局これか、という自らの不甲斐なさを責める気持ちの両方が共存したため、複雑ではあった。
 
まず、運転していた段階で薄々勘づいていたこと。
大気が震えている。
地鳴りがしている。
地面も空気も揺れている気がしてならなかったのだが、改めて研究所の駐車場に停車してからは明確になった。
この時点で尋常ではない事態だという感覚は大いにあった。
 
近くにいた梨紗たちを見てどうにか駆け寄る。
ペア・バルミー・アンノウン。
…と、少し離れた位置に、…あれは、籠様?
 
麗しい女性が5人も、こんな異常事態の僻地にいることの異様さが突然際立ってインプットされてくる。
全員が研究所の方を向いている。
つまり背中からみんなを見る位置。
籠様よりも少し先、2階か3階かその中間ぐらいの高さに異質な存在感。
黒い何かがある。
なんだありゃ。
 
籠様はどうやらアレと対峙してる。
駆け寄る途中であまりにも色々な情報が飛び込んできてしまい、足が止まっていたことに自分ですぐ気付かなかった。
緊迫しているのに、地面と空気からゴゴゴゴという振動のような音がする以外に何も聞こえない。
根拠はわからないが、元凶は空中の黒いアレだと感じる。
動けずに見ていると、やがて黒い謎の物体の存在が緩やかに変化し、振動音も穏やかになってゆく。
何が起こったのかわからない。
 
ナスくん手伝ってください、という声が聞こえた。
呆然としていた俺は、ビクッと身体が一度震えた。
現世に戻ってきたような気分だ。
あ、尚都、という梨紗の声が微かに脳に届いた。
梨紗に微かに頷いた。
 
行こう、まだやることがあるみたいだ。