Grim Saga Project

045 C13 そうして継がれる

 
 
 
不思議な少女が現れた。
まるで妖精。
妖精なんて本物を見たことなどもちろんなかったが、存在するならこの子のことだと思った。
 
とても幼く、身体も小さいのに、ただの子どもという雰囲気ではない。
愛らしくも異様。
私たちに近づくようにゆっくりと歩いてきて、にっこり微笑むと、黒い悪魔に向き直る。
 
可憐。
こんなに恐ろしい状況で、まだ空気はビリビリと震えているのに、得体の知れなかった恐怖心が和らぐのを感じる。
ただ立っているだけの後ろ向きの少女からは、驚くべき力強さすら感じる。
 
長く沈黙が続いているように感じたが違う。
妖精と悪魔は会話している。
内容は読み取れないが、なぜか確信的だった。
 
その後、しばらくして地鳴りと大気の震えが徐々になくなっていくと、黒い悪魔だと感じていた物体が一振りの刃となり、ゆっくりと空から降りてくる。
私の基に来る。
両手を小さく差し出すと、その上に静かに黒い物体が収まった。
 
小さい。
圧倒的な気配からは想像もつかないほど小振り。
 
 
 
「さあ、今度は主が我を楽しませてくれ。ミクのように。」
 
 
 
黒い悪魔だったものが発した一言は、私以外にも聞こえたようだ。
何が起こったのかわからずきょろきょろしていると、妖精の穏やかな笑顔が目に映った。