038 C11 万年筆はかく語りき
「簡単に言うと、真相に迫る力、って感じかなあ。」
「え、なにそれ、めちゃくちゃ便利。」
「もちろんなんでもかんでも、ってわけにはいかないんだ。真相に迫る方法は、器と対話することなの。で、それがとっても時間が掛かるし疲れるんだよね。だから、さっきのようなああいう緊迫した場面で使うのには向かない。」
「なるほど。どうして、器と対話すると真相に迫れるの?」
「どうしてかはわからないんだけど、私の器はいつも困ったときに対話しながらヒントをくれるの。ただ必ず直接的に何かを教えてくれるわけではなくて、考え方や見方の誤りを指摘してくれるような感じで。」
「なんでそんなことするんだろうね。あと、なんていうか、それって能力とはまた違う感じするよね。」
「んー、たしかに。もしかしたら、まだ本当の能力は使っていないのかな。それか、あの対話の中に私が理解できていない何かがあるか…。」
「うん、まあでもとりあえずそこは置いとくとしよう。なんで器はその色んなことの真相を知ってるんだろう?」
「うーん。会話してる感じ、何かの特殊な力で真実を知っている、とかの感じではなくて、私と同じだけの知り得た情報からわかるはずの結果や結論を私が見出せていない時に色々教えてくれてる感じなのかなあ。」
「探偵の素質ありそうだね、バルミーの器。」
「あー、それはもう最強かも。」
「だから、たしかにそう考えたらもっと早くわかったかも、とか気付けたかも、みたいなことに意識が向くようにしてくれてる感じなのかな。最小限の情報から導き出せる最大限の結果をくれる、みたいな。」
「能力の利用に少し躊躇があるように思えたんだけど、そしたらなんか納得かな。現段階では知り得た情報がどんなものであっても、なかなか今の三人の安否確認ができるわけではなさそうだし、時間も掛かるしめちゃくちゃ疲れるんだったら今使うことが最適かどうかはちょっと考えちゃうね。」
「うん。だから私から積極的に利用するシーンは自宅・自室とかなんだよね。学生の頃、器から対話を持ちかけられて、よくわからないまま応じていて気付いたら一人で真夜中の教室にいたことがあって、そこはちょっとびびってる。」
「え、そんなに時間使うの!?」
「よくわからないんだ。気付くと何時間も経ってるし、めちゃくちゃ疲れてるし、体感ではもっと全然短いから。」