037 A12 新たな可能性
遅い。
遅すぎる。
オレンジのあの姿勢なら危険があれば察知したら三人で戻ってくるはずだ。
凛ちゃんだって、誰より瞬もオレンジも危機に晒したくない。
ペア、バルミー、アンノウン。
そして私の4人でできることはあるか。
ペアの能力はわからない。
アンノウンはマスタではない。
バルミーの能力は…?
特別研究室に閉じ込められた時はあそこから脱出するのに向くようなものではない、と言っていた。
それはどんなものだろう。
今までなんらかの提案をして来ない、ということはこの状況を打破できるような類のものでもない、ということなのだろうか。
とすると、あとは私。
読心、または視覚の共有か。
今中にいる誰かの視覚を共有できれば、または心を読めれば状況だけはわかるか。
わかったところでそれだけだ。
それでは何もできない。
「リサ、落ち着いて。あの子たちは大丈夫。」
「…本当?」
「うん。何も起きてない。だけど、思いのほか執着してしまってるね。」
「遅いもの。絶対ちょっと見て終わりにはできてない。何か見つけてるよ。」
「十中八九、堤さんだよ。これだけの異常事態を巻き起こしてる。当然警戒してるはず。」
「何かない?今私たちにできること。」
「うーん。あ、バルミー。今なら使いどころあったりするの?貴女の能力。」
「あるかもしれない。今度は。アンノウンの大事な家族を助けてもらっちゃってるからね。あまり気は進まないけど、やるだけやってみる。」
「…?」
「お父さんと兄を助けてくれて本当にありがとう。ゼロ…じゃなくて、えーっと、ジャガーにもここまで色々手伝ってもらっといてものすごく勝手なんだけど、バルミーの能力について、お願いがあります。」
「話してみて。」
「ええ。あまり知られたくないの。ペアとリサだけの心に留めておいてほしい。」
「どう?ペア。」
「うーん。じゃあ交換条件はどうかな。ちょっとズルいかもしれないけど。私たちは訳あって今回みたいな異質の出来事に関係してしまうことが多いの。今までにも何度もあって、下手をすると命に関わるものもあったし、実際に近くで人が亡くなったこともある。だからきっとこれからも。仲間になってくれ、とまでは言わない。そんな軽々しくお願いできるような内容じゃないから。だけど、有益な能力なのであれば、どうしても困った時にまた力を貸して欲しい。どうかな?」
「うん。わかった。正直まだ私はこの能力も器も、多分受け入れきれてない。認めてはいるけれど、恐ろしくもあるんだ。だから、極力使わないことにしていたし、この能力に起因して私たちも大事な人を失ったりしてきているわ。だけど、アンノウンが昔からずっと抱えていた問題を解決するのに力を貸してもらってしまったんだもの。できることはする。」
「ありがとう。そしたら、私とリサは今はバルミーの能力は見なかったことにする。いい?リサ。」
「うん。私はそれで大丈夫。」