Grim Saga Project

035 A11 DEAD AND ALIVE

 
 
 
ナビに頼って約30分。
街の郊外感からは意外なほどキチンとした病院に着いた。
ナスくんの運転は安心のレベルだったので、ナビで目的地にしたこの病院には電話で事前に急患二名の連絡を入れておいた。
 
深夜の時間帯だが、思いのほか手厚く受け入れられてすんなり二人が運び込まれる。
まずは二人の状態を確認しなければいけない。
待合室で待つ間にナスくんに二人のことを話す。
 
 
 
「つまり、あの二人は親子なんだな。」
 
「そういうことだ。息子の方は水谷未来。」
 
「水谷科学研究所の長である、水谷夕心の息子、か。調べた時には亡くなっているとあったんだが。」
 
「その通りだ。生きていた経緯まではわからないが、オレたちが潜入したのはまさにこの未来の生存を確認する目的だった。」
 
「どういうことだ?」
 
「アンノウンの本当の名は水谷未知。水谷夕心の娘であり、未来の妹。」
 
「アンノウンが未来の生存について調べていた、と?」
 
「ああ。はじめは確証がなかった。だが、色々調べるうちに水谷科学研究所にいる、という話まで辿り着いた。所長の娘であるアンノウンでさえ、研究所への出入りは自由ではなかったがアポを取っては警戒されるだろうから、計画的突発訪問で行ってみた。夕心の妻、松浪未久のことは知っているか?」
 
「それも亡くなった研究者だ。存命の頃は研究所のエース的存在だった。いくつも論文を出していたが、若くして謎の事故で死を遂げた。」
 
「そう。その松浪未久までオレたちの前に現れた。」
 
「生きてたってのか?たしか松浪未久が亡くなったのは、もうたしか10年近く前じゃなかったか…?」
 
「それが松浪未久についてはもう少し厄介で、どうもやはり死んでるようだ。オレたちの前に現れた何かは、グリムの器の力で投影された松浪未久だと言っていた。」
 
「本物ではない?」
 
「何を本物と定義すりゃいいのかわからないが、おそらくは。松浪未久が生前所持して心を通わせていた器は、なぜか自身の中に松浪未久を疑似的に形成しているってことなのか、はたまた何らか別物なのか、それとも実際は亡くなっていなかったのか。」
 
「死んだはずの人間が二人、か…。」