033 B11 聖なる審判前夜
駐車場の研究者たちの様子は混沌。
館内放送で避難指示が出たために大半の所員がとりあえず表に出たようだ。
戻ろうとしている者もいれば、どこかに電話を掛けている者もいる。
ほかにも様々。
すぐに研究所の利用が再開できないと踏んで、車で帰宅を始めた研究者も一定数いる。
ペアたちの話し振りから、堤さんという女性が特別研究室の火災のキーマンのようだが、どうやら避難している研究者たちの中にその姿は見当たらないようだ。
オレンジとも突然の再会を喜ぶも、感傷に浸る余裕はない。
まだ真っ只中にいる。
一歩間違えたら、瞬だってオレンジだって危ないかもしれない。
私は誰一人失いたくない。
ペア・リサ・バルミー・アンノウンの会話に加わった…、というより、より現状を把握するために聞いていた。
私は堤さんという人の顔を知らない。
なので、堤さん探しで最前線に立ったところで、見つけても見分けがつかないからそれは私の役割ではない、と思う。
守るために攻めたい。
一刻も早く、この危険な状況を脱したい。
さらに、松浪未久とも会っていない。
何かできることはあるだろうか。
なんか凛ちゃんめっちゃ難しい顔してんなあ、とオレンジに言われてハッとした。
「うーん、そうだな。たしかに堤さんを見つけるのが先だ。だけど、ここにいてもおそらく出て来ない。」
「ウチまだまだいけるよ。だいぶ鍛えたんで。ぜーんぜん話の中身わかんないとこいっぱいあるけどさ、その堤さんがさっき運ばれてった二人を殺そうとしたんだろうなってことも、そのための仕掛けであの部屋を燃やしたんだろうな、ってのもわかった。つまりだねぇ、ウチらは招かれざる客だったってこと。何が言いたいかっつーと、ウチらが来てなかったら、あの二人はそのままやられてたかもしれないってことと、こうして真相を探る人々は出て来なかった。少なくともしばらくはね。研究所はその間、その堤さんの好き放題にできるっちゅうことで、今まさに研究所を探り直すべきだと思うんよね、ウチは。」
「オレンジ、あなたしばらくの間にずいぶん頭もキレるようになったね。私も賛成だなそれ。」
「うん。びっくり。オレンジちゃん天才。」
「うわ、マジで。よし、そしたらさすがに危ないから、ウチが連れてくのは二人だけな。それが限界。」