Grim Saga Project

025 A08 渦巻く火と人

 
 
 
俺は最後尾。
可能な限り、そうするようにしている。
全体が見えるからだ。
 
到着した奥まった部屋を堤さんが特別研究室だと紹介した。
彼女が首からぶら下げていたカードを使ってセキュリティロックを解除すると、正面の壁がシュッと消えた。
特別な研究が行われているという仰々しい、または物々しい部屋を漠然とイメージしたが、そこは小部屋だった。
 
二重にロックを掛けています、と堤さんが言う。
二つ目の鍵はカードではなく、番号を入力する方式のようだ。
奥に続く部屋へのドアの脇にあるパネルで何らかの操作を行うと、更にドアが開く。
 
中は赤かった。
どんな研究室かを確かめるまでもなく、燃えている。
相当の広さがあり、かなり様々な数の機器が設置されているようであったが、巻き起こる炎に圧倒され、元の研究室の様子を想像することが難しかった。
 
しかし、人がいない。
研究者はいないのだろうか。
水谷所長はどこにいるのだろう。
燃えているのは奥が一番激しく、部屋に踏み込むと左右もそれぞれに火の手が上がっている。
 
ドン!と、先ほどよりは小規模な爆発があちらこちらで起こっていて、その都度炎が吹き上がったり、何かの部品が転がったりしている。
明らかに危ない。
最前列側のペアが振り向いて、ここに何人いるのか、を半ば叫ぶように問う。
助けなければ、と考えていることを察するのは容易である。
しかし、同じく最前列にいたはずの堤さんの姿が見当たらない。
 
とりあえず行けるところまで先に進み、怪我人や意識を失っている人がいないかどうかを足元も含め確認すべき、と考えたようだ。
どんどん室内の温度が上昇していく。
どうにか先に進んだところで、床に横たわっている誰かを見つけた。