Grim Saga Project

024 B09 Dying not died

 
 
 
見たことのない誰かが、ゆっくりとこちらに歩いてくる。
女性だと思う。
その女性以外の景色はすべてが白だった。
だから、周りは光っているようにも感じ、眩しいと思った。
 
こちらに向かって来ているはずなのに一向に近付かない。
しかし、その女性に見覚えがあるような気が、急にしてきた。
それもつい最近だ。
会ったのだろうか。
 
遠くに感じるはずの女性の口元がクローズアップされて視界に映る。
微かにその唇が動く。
 
あの子を頼むね。
未来が狙われているんだ。
 
はっきりとそう言った。
未来が狙われている…?
何の未来だろう。
 
そして、わかった。
この女性は、先ほど遠くの壁越しに目があった。
あれ?
僕はそれで、どうなったんだっけ。
 
呼ばれている。
…ような気がする。
そちらに意識を持っていかれると、白い背景も女性もぼやけてやがて消えた。
 
目を開けると、僕は凛に抱かれていた。