Grim Saga Project

021 A07 矢は三本なら折れないか

 
 
 
轟音の直後、能力を使って中を見ていたはずの瞬が倒れた。
俺たちは建物の外から爆音を聞いただけだったが、瞬は爆発に関する何らかを目にしてしまい、衝撃で気を失った、と考えるのが妥当か。
 
バキーンと何かが壊れるような割れるような音がした。
見るとラムが躊躇いなく、研究所の入口を蹴破っていた。
いやいや、やっぱ意味がわかんねぇ。
モデルのはずのラムはその細い足でなぜそんなことができるのか。
もちろんそんなことを尋ねている場合ではない。
 
 
 
「尚都、梨紗。ジャガーたちが危ないかもしれない。凛ちゃんは瞬をお願い。大丈夫だとは思う。」
 
 
 
梨紗が入口に向かって駆け出す。
おいおい。
物騒なのは勘弁だぜ。
つい今しがた梨紗を守るって誓い直したばかりで、またこれかよ。
しかも、当の恋人は迷いなく突撃する気満々だ。
ラムといい梨紗といい、女性たちの思い切りのいいこと。
 
誰か内部のことを知っているやつは、…いるわけないな。
とすると、こちらの安全を最低限確保しておくために三人一組で行こう、と言いながら俺も入口に小走りで向かう。
壊れたドアの奥では、エントランスに異常があったためかアラートを表しているであろう警告音が繰り返し鳴り響いていたが、パッと見てわかるような火の手や煙はない。
 
とりあえず当てずっぽうで進むしかないだろう。
エントランスホールで迷っている時間はない。
まあ、ラムと梨紗なら何も言わなくてもそんな心配をする必要はないだろう。
彼女たちがどういう選択をするか見守ろうという思いと、だからこそ出しゃばらないでおこうという気持ちが重なり、麗しき二人の女性の姿を数歩手前から注目していた。
いや、ちょっと待て。
ドアを蹴破ってエントランスホールに入ったはいいが、ここから先もセキュリティロックが掛かっていて進めないな、と思ったら右手の扉がシュッと開いた。