019 C05 黄昏て黄昏る
次の瞬間、松浪未久はいなかった。
アンノウンもバルミーも呆然。
それはそうだろうと思う。
その後、堤が部屋に入って来た。
「堤さん、あの…。」
「はい。みなまで言うな、です。まったくもうあの方は…。本当はダメなんです。研究所の中でも所長と私などごく一部の者しか知らない最重要機密なんですよ。どうしてもみなさまの元に参りたい、と仰られて。」
「なぜ母はあのような姿に?」
「私からは何も申し上げられません。」
「父からだったら?」
「私の口からはなんとも。しかしあのご夫婦は、なんというかこう、常識で測れない側面がございますので予想もつきません。今だって連れていかなかったら、もう少しで成果の出る研究結果をぶっ壊しちゃうからね、って言われてしまい仕方なく…。」
「隠さなければいけないのは、あれが松浪未久だからではなく、死んだはずの人間がここにいるからですか?」
「どちらも、ですね。外部に知られてプラスになる要素は皆無かと存じます。」
「まあ、たしかにそうか。」
「堤さんも大変そうですね。心中お察しします…。」
「ちょっとバルミー、私の両親なんだけど…。」
「や、はは、面白いね。あなたのお父さまとお母さま。」
「面白いで済むのかよ、これ。」
「とにかく、みなさまそろそろお引き取りいただきます。こちらへ。ご案内いたします。」
部屋から出た直後に、盛大な爆発音が鳴り響いた。