Grim Saga Project

018 A06 人間は考える

 
 
 
だから私は足手まといになるわけにはいかない。
最善を導く。
 
基本的に、適当な推測ばかり並べても仕方がないけれど、仮説と検証の繰り返しは必要で、その精度を高めるためには観測により情報を余すことなく把握・理解するしかないのだと思う。
用意された問題ではないから、必ずしも適切な解答も用意されていないけれど、大抵違和感には理由があるし、答えに辿り着けていない感覚がある場合は情報が不足しているか、何かを見誤っていることが多い。
 
さて、今は何が問題で何が答えなのか、すべて不明瞭だ。
情報が不足している状態といえる。
精確に状況を把握するのに不足している情報は、主にジャガーの周辺全般である。
さらに私はこのチームで後発なので、直接ジャガーのことを知らない。
知らないから知るしかない。
 
自分で調べる。
人に聞く。
基本はこの繰り返しである。
嘉陵寺の事件のことは、各メンバーからそれぞれ色々聞いていて、その経緯からはジャガーはグリムの器に関する情報を集めようとしているであろうことがわかっている。
また、自己の見つめ直しのような心境であるうとも感じられる。
 
ジャガーがマスタなのかどうかについては微妙であった。
妖精によって繋がったメンバーの共通項なのだと考えている側面はあるけれど、凛ちゃんのケースなどから必ずしもそうとも言い切れない。
とはいえ、なんらか器が関係しているというか、そもそも何のためにグリムの器が存在していて、集められていて、最終的に何を目的にしているのかわからない。
これまでに器に関係した人々は、私たちを除くと多くは私利私欲に利用しようとしているに過ぎない。
 
もっとそのレベルではない大きな何かがあるように思えてならないけれど、感覚的にそこまでの何かを追っても今はまだ何も見えない。
あくまでも慌てずに目の前のことに集中していく方が得策のように思う。
 
そんな風に色々考えた結果、ジャガーがこの研究所に侵入した経緯や、今同行しているらしき何者かの人々の素性がしれないと憶測の範囲が大きくなるであろうから、一旦深く考え過ぎないで待つ時間にするのが良さそうである。
暫定的にそんな結論を出した。