017 A05 特殊な関係は大理石模様
尚都がぼーっとしている時は私のことを考えてくれている。
なぜかはわからないが確信めいた感覚、と思ってから気付く。
そうか、これも指輪の力かもしれない。
ごく一般的な普通の恋人同士だった私と尚都は、様々な不思議に見舞われる形で特殊な恋人同士に変化したと思う。
そこには、謎の妖精さんがいるし、弟の瞬がいて、あの引っ込み思案だった瞬がこんなに社交的になって、支えてくれる凛ちゃんがいて、友人の梨恵留がいて、…周囲の人々の中で奇妙な関係が生まれ、新たな登場人物が次々に現れる。
目まぐるしく刺激的な毎日に、私の日常は変貌した。
どこにでもいるごく一般的なOLだったはずの私は、今はもういない。
何ができるかを常に考える。
最善を追い求めていないといけない。
時と場合によっては、命の危険に繋がることすらあるのだから。
だけど私は、そんな今の環境を疎ましくは思っていない。
むしろ、愛おしい。
一連のイレギュラーは、私の人生を大きく方向転換させたと思うのだけど、その波に乗らなかったら、間違いなく尚都と今一緒にいることはない。
この場にもいないし、瞬との関係もまた違ったし、それは凛ちゃんも梨恵留もほかの大事な人々も。
変わり種の今を形成している人たちがみんな好きなのだ。
人類をみな等しく愛するような感覚は私にはまったくないのだけど、こんなに私が好ましいと感じる人たちが集まることがあるのかと思うほどだ。
だから、掴みたくても掴めないようなこの大事な人たちと一緒にいられる権利を手にした素敵な偶然を手放さないために、私のできる最大限をもって臨む。
心配してくれるのは嬉しいけどさぁ、仲間外れにされたら許さないから。
色々考えた結果、出て来た言葉はこうだった。
もちろん、ぼーっとしている尚都に対して。