016 C04 真実は深淵と畝る
「あ、お、おぉ、…お母さん!?」
「え?お母さん?この人が?」
「やっほ、おーっきくなったねぇ、未知ちゃん。よくお母さんだってわかったなぁ、いいぞ、褒めてあげよう。」
「な、なんで…。」
「まあ、そうなるよなぁ、うん。パパにそっけなくされたでしょ、ごめんよ。ちょっと色々ありすぎて、全部は説明できないんだけどさ。昔っから変な人だったでしょ、パパは。まあ許してやって。どれもこれも一応あれでボクたちのために必死でやってることなんだ。壊滅的に言い方とか下手くそだけど。」
「お母さん…、ってことは、貴女は松浪未久さん、ということですか?」
「いかにも。厳密には松浪未久だった者、かもしれない。君たち、未知の友達かな。ありがとね、変わった娘と一緒にいてくれて。訳あってボクは未知とは一緒にいられそうもないんだ。良くしてやって欲しい。」
「だった者…、つまり実際には本当に亡くなっておられる、ということ…?」
「察しがいいね。さすがは娘とそのお友達。いや、ふざけてるわけじゃないんだ。この姿も生前のボクだし、意識ももちろんオリジナルのものなんだけどね、触れることはできないよ。ホログラフなんだ。うーん、なんて言えばいいかな。心だけ生きててね。器の力を借りてこんな不思議なことになってる。」
「グリムの器にこのような力が?」
「うん。そっちの女の子はマスタだね。器の気配を感じる。しかも比較的適合できてる。すごいな。羨ましいよ。」
「わかるんですね。はい、私はグリムの器と共に生きています。」
「うん。素晴らしい。そっちの男の子も未熟だけどマスタのようだ。ああ、君たちを外で待ってる子たちがいるね。しかも何人もマスタがいる。これはすごい。初めてだ、一度にこんなにたくさん。」
「どういうこと?ゼロ。」
「ここで何か起きた時のために布石を打ってはおいたんだが、まさか直接来るとは思わなかった。」
「とにかく、ボクはそろそろ行かなきゃいけない。未知、パパをよろしくね、あと未来も。二人はまだちゃんと生きてる。でも、放っておいたら危ないかもしれない。今日は来てくれてありがとう。話せて嬉しかったよ、元気で。」
「待って!お母さん!」